損得では語れない熱い情熱

先日友人と恋愛の話をしていて「ほとばしる情熱、すなわちパッションを感じようゼ」とか、うすら寒い、バブル期でもキャッチに使わないようなタイトルで議論をかわしておりましたごっつです。

そんな話をしていたら、堀田さんの漫画「アジアのディープな歩き方」を再読したくなり、ダンボール箱より引っ張り出してきました。私は本やCDを売らない人なので、読みたくなったとき、聴きたくなったときにすぐ読める再生できるという、起動性がバツグンによいアーカイヴを所有していることになります。
そして今回もそのアーカイヴにお世話になりました。
#個人的に「今読みたい、聴きたい」に限らず、思った瞬間に行動すること、実現することに慣れるって案外大事ですよね。その瞬間感じたことを信じたいというか、なんというか。

確かこの漫画は雑誌「ダヴィンチ」かなにかで紹介されていて、すぐ本屋に買いにいった本です。
内容は彼女に振られ、会社も辞め、所持金100万円が尽きるまでのアジア放浪の旅に出た主人公杉田くんのお話し。
タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナム。出会いと別れを繰り返しながら、文化の違いなどを実感していく。当然危険な目にも会う。キレイキレイなバックパッカー放浪記では決してなく、リアルにそりゃぁもう堀田さんの画力で、ぐりんぐりん展開していきます。
カンボジアではポルポト派の話から政治の話も少し触れていますが、説教くさくならず、日本人の立場から、客観的に描写しているシーンは何度見ても、ぐっと心に響きます。ただそこにあるのは事実だけだからと思いますが……。漫画は上下巻モノ、ゴロっとまるごとアジアがここには詰まっている感覚なんですよね。何の制御もないというか、なんというか……。

さっきこのエントリーを書くために堀田さんのサイトで知った事実ですが、この漫画、編集者も堀田さんも自腹で取材を敢行したそう。※漫画が出た頃はサイトなんてなかったわ……
だからというわけではないですが、“制御されていない感”というなんとなく自分が感じていたものが、裏づけされた瞬間でした。
アジアものやろうか。いいねーいいねー。と編集者と堀田さんが居酒屋で(かどうかは知らないけれど)、交わしている感覚からそのまま作品になったというか、そいういう妙なアッパー感がそのまま漫画というか作品に詰め込まれているんですよね。これが、ゴロっと感につながるんでしょう。

働くということにソレ相当の報酬があることは当然なのですが、今も昔もそういうところにとらわれないところにこそ、人を動かす力が存在するし、たくさん予算を積んで挑んだからといって、それが面白い企画になるとは限りません。
もちろん潤沢に資金を使用しなければ完成できないものもありますが、そういう企画は逆に言えば金さえ使えばダレでもできるということとも言えます。私はこのことを某版元にいる際に学びました。

料理もそうですが、貧乏から新しい創作レシピが芽生えます。満たされないからこそ、そこを埋めるために何かを変えよう、産み出そうとする。その行為は決してやめてはいけないことだと思っています。そして満たされたらそこに創作は存在しないのではないかなぁとすら思っています。
とは言え、ある程度の予算はちゃんとないとライターさんなどに支払いできないので、必要最低限のお金は必要ですけれど!

損得ではない何かに心動かされる瞬間というものが人間にはあり、それがほとばしる情熱とパッションというのならば、うすら寒いキャッチすら意味があるものに思えてくるものだなぁ。byあいだ みつを


「堀田さんのサイト」