日本一のエンターテインメントショー

長かった「ユーミンスペクタクル シャングリラ3(ギリシア数字)」が千秋楽を迎えました。

このショーは、コンサートとサーカスとシンクロを融合させた、まさにエンターテインメントの極みのようなもので、熱狂的なファンも多い演目のひとつです。
ここまでくるのに、いろいろ演出の変更などがあり、それを観るのも楽しみの一つかもしれませんね。
さすがに千秋楽ともなると、完成形のステージを観ることができます。

今回のテーマは“人魚姫・ドルフィンの夢”。OPで葬送を連想させる演出と楽曲「グレイス・スリックの肖像」、次曲で「Happy birthday」という、誕生をテーマにした楽曲をはさみ、物語がスタートです。
個人的解釈ですが、ユーミンは人魚で、人魚がユーミン。エンディングまで見るとそんな感じの設定と理解しました。
今回はその人魚役にシンクロナイズドスイミングのメダリスト、ヴィルジニー・テデューが挑んでいます。もうその美しさといったら、ダイビングをする人や、ディズニーの映画「リトルマーメイド」のパッケージをイメージしていただいたらわかりやすいですが、ブルーホールに人魚がいた。そんな感じです。研ぎ澄まされた美。

そして私がこの公演の素晴らしさを伝えるのならば、細部まで計算しつくされた選曲やセットチェンジまで組み込まれた演出、そして、なによりも照明を担当した林さんのことでしょうか。
もちろんアクトも素晴らしいのですが、その魅力を120%引き出す照明は、今まで見てきたどの公演よりも正確で、的確。ショーのどの場面でシャッターを押しても、いい写真が撮れることでしょう。

影まで計算し、陰影までセットの一部にしてしまい、途中で繰り広げられる水を使った演出も、左右対称、黄金比の間隔でデザインされ、噴水も立体的な曲線を描き、平面でも立体でも(どの席から見ても美しく見える考慮)、その美しさを堪能することができるようになっていました。照明もしかりで、センターステージ(円形)にぴったりあわせたスポットの数々、放射で放たれるストロボもすべて対照。もちろん残光線も計算されています。
林さんが“光のメティエ”と呼ばれる理由がわかった気がします。

技術的なことは何も知らなくとも、感覚だけでもシャングリラの世界が美しいと感じるのは、ベーシックなことをきっちり抑え、そこにさまざまな演出が加わっているからなのです。人が美しいと感じたり、素晴らしいと感じる音楽などには、つきつめていけばちゃんと理由があり、私にはその理由をわかりやすく読者の人に伝えていきたいという思想が常にあります。細かすぎるのかもしれませんが、デザインや写真、文章など、すべてにおいて、その細かなところに、神様が住んでいるのです。どうせ観てもわからないよね。だからやらない。これは間違っていると、「シャングリラ」を観て、改めて思う次第です。

やらずにはいられないし、こだわらずにはいられない。確かにこだわりすぎてもおかしくなりますが、こだわりも絶妙なバランスで盛り込む。これがプロと呼ばれる人たちの仕事です。

以前、EXILEのコンサートの演出を日本で二番目に素晴らしいエンターテインメントショーだといいましたが、そうです。私にとっての一番はこの「シャングリラ」なのです。
今回も素晴らしいショーでした。内容については割愛します。具体的要素(サーカスのレベルやスイマーのレベル)は、観たらだれしもがわかることだと思うので。

#余談ですが、本当に演出が細かすぎて、観終わったあとは映画を1本観たあとのぐったり感に襲われます(笑)。ぜひDVDでご堪能あれ。