今一度モラルを問う

私の友人がとある有名百貨店で経験した話。

とある催し物の展示即売会目的で会場を訪れた友人。
偶然にも取材が入っていたようで、その時間は店員さんなどはまったく接客できていない状態だったそう。
友人は欲しいものが見つかったので、店員さんにアイコンタクトをするも、取材を優先されてしまい放置。
しばらく待ってみるものの、終わりそうもないため、そばにいた別の店員さんに「取材は何時ごろ終わりますか?」と問い合わせるも、今始まったばかりなので、わからない、という回答。
その後も何度か店員さんにアイコンタクトをするも、結局は無視な状態になり、最終的に友人は次の約束があったため、何も買わず会場を後に――。

友人はこの一連の件を、百貨店のご意見メールに投稿しました。
百貨店からはすぐに返事があったそうです。
内容は、お詫びと、当日の取材はインターネットショッピングサイトのもので、アポナシだった。
というものでした。
友人にとっては、アポナシの取材だろうがなんだろうが、接客よりも取材を優先してるサービス業の姿勢とはいかがなものか。ということだし、正論だと思う。

が、しかし、私はこの話に今のインターネットメディアの現状、モラルをすかしてみていました。

まず、店舗取材にも関わらず、百貨店に許可なしで取材を行っているという事実。時間がない、予算がない、店舗にだけ許可を取った、いろいろそこに理由はあると思うけれど、こういう場合は店舗のほかにも会場である百貨店に取材許可をとるのが通例です。もちろん店舗取材の場合、営業時間があるので時間などは双方ですり合わせます。閉店後の場合もあるし、お客さんが入っている状態の画がほしいのなら、映っているお客さんにも許可が必要なわけで。いろいろとやることは多いです。
きっと一切していないと思われる。
※そもそもそんな取材を受けるな、それが本質ですけどね。この問題では。お客さんのこと全然考えてないし。

紙とネットメディアをこういうところで比べてはいけないし、ナンセンスなのだけれど、やはりロクデナシでも先輩はいたほうがいいと思う私です。マスコミ概論やリテラシーなどなんの勉強もしてない人たちがどんどんこうしてインターネットメディアに携わり、取材のモラルが問われ、今後一切取材お断り。という店舗がこれから増えるのではないかと思う私です。

先日デザイナーさんと話をしていてハイタッチしたのですが「そろそろweb業界の人は引き算を覚えてほしい」という理論。あれやりたい、コレやりたい。気持ちはわかります。でも仕事である以上予算があるわけで、やはり予算を大幅にオーバーするのであれば、追加予算を載せるか、予算内でできる内容に企画を変更すべきです。
あとは、エンドユーザーがどこか。ということ。

お金はだせない。けれどやりたいこともやりたい。これは矛盾しているのです。

デザイナーが写真を撮ったりネームを書いたり、編集者が写真を撮ったりすることで予算を削減しようという発想はいい加減卒業すべきです(細かい部分は除く)。確かに予算は抑えられるかもしれませんが、これをすることにより、クオリティやこれからこの業界で仕事をしたいと思う人たちへの道をどんどん狭める行為だということを、考えていただきたい。こういうことを1度してしまうと、悪しき前例ができ「○○では編集者が撮影してたよ」と言われ、予算に積まなくとも、それ以上のことを別の会社にも要求するということが出てきてしまいます。

クライアントの気持ちはわかるのです。撮影のことでたとえると、出来る出来ないでいったら、(自分で写真を勉強しているなら)きっとできるんです。でもそれを私たちは「はい、わかりました。撮影します」とは言えないし、言ってはいけないんです。こういうことしたいなら、このぐらいの費用が必要なんです。と伝えることが大事だと、私は考えています。伝える、というか、ちゃんと戦うことですね。最終的にやるやらないはともかくとして。

紙だろうが、webだろうが、テレビだろうが、その場だけのことを考え臨機応変に対応することも編集者やディレクターとしては大事ですけれど、悪しき習慣を自ら作ることだけは、本当に避けたいです。企画の立てかた、取材のやりかた、写真の見かた、進行管理、メディアに携わるかたたちは、もう少し責任と自覚を持って仕事をしていただきたいと思います。特にインターネットメディアに携わるかた。こういうと偏見がありますが、編集言語、セオリーが通じないかた非常に多いと感じますので。紙だけやってるときって、「え? 当然でしょ?」というような基本的なことでのトラブルってなかったんです。私だけかもしれませんし、インターネットメディアの編集者がそういう人ばかりでないことも知ってますけれど、百貨店に許可なしで店舗取材しようとか、当日いきなりとか、そういうことをまずできると思ってないですし、発想もないです。知らないだけだと思うんですが、やっぱりちゃんと編集ってなんぞや。を理解してから名刺に「ディレクター」って書いてほしいです。企画をたてるだけなら誰でもできるんだっつーの!!

話は戻りますが、最後に。
私の友人の“店員さんを呼びたい”という空気、店員さんより誰より、編集者が気づくべきです。