現場のリアル

情報を捏造したとして問題になり、遂に関西テレビが民放連から除名された。
そして今夜「私たちは何を間違えたのか検証・発掘!あるある大事典」を見ています。

私はどうしてもこの番組をリアルで見たかった。

・低予算でもっとも効果的な制作物を作れ
・「無理です」と言えない現場の空気
・人員不足
・制作スタッフがジャーナリズム研修をまったくうけていない

など、編集の世界でもまったくもって通用する内容が放送されています。
たまたま今回、1つのテレビ番組で行われた捏造がこのように公になったわけですが、この問題は実はとても根が深く、じゃ明日から。というわけには解決されない問題です。

今日は私もこんな仕事についている端くれとして、意見を述べたく思います。
私の行っている業務の中に健康ものの制作物もあるのですが、その中で某企業様の健康保険組合で配布されている冊子があります。
毎回企画を出すたびに、健保の担当者から、この番組に代表されるような、テレビの健康番組の名前をだされ、番組で○○と言っていた、とか、何の根拠もない健康サイトのURLを渡され、同じようなことをやってくださいと、いわれ続けていました。そのたびに私は、「立証できる資料と監修者がいません」と、担当者になぜできないのかを毎回説明するという作業を繰り返してきました。何度も何度も・・・・。もちろん予算がある中でのことですから、独自に実験ができるわけでもなく、既存のデータなどを元に、立証できる企画をだすしかないというのも理由のひとつです。
あと個人的に健康ネタの記事では、監修者が立たない(責任がとれない)ことなどありえないと考えているからです。

1年後、私はこの仕事を失うことになります。

理由は、「こちらがやりたい、あるあるでやっているようなネタができないから」でした。

動画の世界と静止画の世界は表現方法も違います。
もちろん、健康番組でやっていたネタでもきちっと立証できるものもあります。それに関しては問題なく企画を出すことができますが、私は、テレビでやってた、ネットで見たというだけの情報で“誰が言っているのか”“根拠は”、など、そこに何の責任もないネタを元に企画を作ることはできません。それが私たち編集者という存在がある意味なのではないでしょうか。
(先日も書くことについて同じようなことを書きましたが)

担当者の希望をかなえることができず、その結果、レギュラー仕事が1本なくなりました。

担当者からは「監修者がいなくてもいい。テレビで言ってたからテレビ局に許可を」ひどいときはその番組で出版した本などをもってきて「これをまとめてくれ」など、散々言われました。
私も毎回時間と予算のない中追い詰められ、先輩に相談もしましたが、やはり出た答えは「NO」というものでした。
自分が作ったものにちゃんと責任をもっていたいという信念のもと制作を受けているものでしたので、レギュラーがなくなるという結果が出たときも、仕方ないと受け止めました。これに限らず、やっぱりそこに確証が持てないものを世の中に出してはいけないのです。私たちは。

今回の一連の報道を見て、一番先に思い浮かんだのは、この健保の担当者さんの顔でした。どう感じているのでしょうか。

この担当者さんに関わらず、近年、テレビ番組でやっている健康番組の名前を出して、同じようなものを紙で、というクライアントさんからのリクエストは非常に多いです。わかりやすく作るという点では、見習ったり、真似できたりする部分はありますが、“あるある風にやってくれ”というものと“あるあるのネタを記事にしてくれ”とはまったく違います。
ネタそのものに関しては信憑性を自分で調べなくては、企画は出せないですし、構成も考えられません。

私たちは、この事件のことをもう一度深く受け止め、情報を伝えるということを仕事にし、関わっている以上、その責任をまっとうしていくとともに、襟を正したいと思います。

最後に。その健保の冊子は別の制作会社が引き続いて制作を請け負いましたが、紙面は担当さんの言っていたように監修者をはずしたものにリニューアルされていました。
そうです。ビジネスである以上、受ける制作会社がいるのです。それが現実です。