やりたい企画と通る企画は違う
安野モヨコさんの漫画「働きマン」の中で主人公の松方が、理想論ばかりを掲げる新人ちゃんに「やりたい企画と通る企画は違うんだよ」と一蹴する場面がありました。
この場面、数年前の私なら、松方のセリフの意味を理解できなかったと思います。
しかし今は違います。
やはり私たちは“通る企画”を立てなくては意味がないし、世の中に出ないそれこそ自己満足の企画を何百本、何千本書いたところでそれはゼロとイコールです。求められるものを作ってこそです。
若い頃は自分の理想(と思い込んでいた勘違い)を曲げることは=負け 的発想があったのですが、仕事というものの本質が少し見えてくると、勝手に自分でがんじがらめにしていた足かせがはずれ、とても楽に進むことができるようになりました。
ここ数年企業もののお仕事をたくさんやらせていただいたことで、学んだことはとても大きいです。
そんな中、「広告批評」を読んでおりまして、今話題の(といっても、私たちの仲間うちだけで、かなり痛快だよね。という意味で盛り上がっているだけなんですが)大和證券のCM(「華がある篇」)の話題が掲載されておりました。
このCM、エビちゃんこと蛯原友里が出演する完成したばかりのCMを、代理店がクライアントにお披露目するという内容のシリーズもの。ご覧になった方も多いのでは?
実はこれ、今の広告業界を天下御免な感じで皮肉っているのが裏テーマなんです。
ただカワイイだけのエビちゃんの面白くもなんともないCMを試写して、ウハウハして「いいねー、いいねー」なんつってるのがクライアント。CMの質なんてどうでもいい、人気者さえ出ていれば喜ぶ、(どこにでもいる)“しょーもない”クライアントです。こんなCM作ってクライアントのご機嫌をとっているのが代理店。視聴者のことは無視、クライアントOKさえ出たらそれでいい的なダメな広告マン。ほんと救いがたい。そんな(よくある)現場がまんまCMになっています。
このCMを作ったのは、TUGBOAT。
そうです。確信犯です。
こんな現場をよく知ってるからこそ、私たちはこんなCM絶対につくらないよ。という、彼らたちからのメッセージなのです。
なんと痛快愉快なCMなんでしょうか。
「広告批評」にもまったく同じようなことが書いてありました。
通る企画を作るということは、決して媚びることではありません。このCM1本からでも学ぶべきことはたくさんあります。